■ポメラニアン
Pomeranian
■ポメラニアンの紹介
今では「愛玩犬」ということばが似合うポメラニアンですが、その先祖はアイスランドやラップランドの氷原でソリを曵いていた大型のスピッツ族サモエドだったようです。そしてこの大型スピッツがドイツに移入され牧羊犬、番犬として使用されたいったのです。18世紀中期には、ヨーロッパの数ヶ国に広まり、以降、イギリスで小型化が進められ、現在のようなスタイルになったと言われています。この小型スピッツは北ドイツのポメラニア地方で多く飼育されていたために、海外ではポメラニアンと呼ばれるようになりました。
ポメラニアンは、家族的な雰囲気を好む犬種で、友好的・忠実な面を持っています。反面、叱られてばかりいたり、慌しい環境で育ったりすると、性格がゆがみやすいところがあるので、十分な愛情を持って接することが必要です。
■ポメラニアンの歴史
ビクトリア女王はポメラニアンを特に愛好し、優良な系統をヨーロッパに普及させた功労者であると言われています。女王は1891年の第1回のクラフト・ドッグショーに数頭のポメラニアンを出陳しており、女王が亡くなる際に枕元に呼ばれたのは「トーリ」と呼ばれるポメラニアンであったようです。しかし、ヨーロッパにおけるポメラニアン人気は、まったくタイプの異なるペキニーズの出現によって下降し始める事になりましたが、そのペキニーズをヨーロッパに紹介したのも同女王であったとされています。
ちなみに、かのモーツァルトやナポレオンも、このポメラニアンを愛好していたようです。
ポメラニアンはその後、さらに小型化され、毛糸玉のような被毛がより強調されるように作られていきました。そして現在、ポメラニアンはペットとして、またはショードッグとして、常に人気の高い犬種となっています。
日本では高度成長期に座敷犬の飼育ブームがおこり、ポメラニアンは事実上日本のペットブームの幕開けを飾った犬でした。ブームの追い風を受けて利殖目的で参入した素人ブリーダーがまず手がけたのもポメラニアンの繁殖であったとされています。しかしながらその一方ではペーパーボーンと言われる骨格の虚弱な犬や、サイズの過大など、様々な身体的・性格的な問題のある犬が市場に出回ってしまい犬質の低下が嘆かれという結果を招いています。
■ポメラニアンの特徴
ポメラニアンは、ずんぐりとまるまった体型をした小型のスピッツです。実際、その小さい耳と二層になった被毛、それにクルッと巻いた尾がスピッツの特色とよく似ています。警戒心の強い表情はどこかキツネのようにも見えます。また、滑らかでイキイキとした足取りで歩きます。
ポメラニアンは作り物のようなかわいらしい風貌の小型犬で、体の各部はよく引き締まり、被毛は顔と四肢の下方を除いて非常に豊かです。下毛はやわらかい綿毛、上毛はまっすぐで粗い感じのダブルコート。首や肩の前部、胸には特に長い飾り毛があり、それが肩まで広がっています。特に額が丸くやや突き出た感じで、目の間のくぼみははっきりしています。
鼻筋は短く、鼻の色は黒いのがよいとされているようです。三角形の小さい耳は、やや離れてつき、前方に直立しています。尾は付け根が高く、背の中央に背負っており、長い飾り毛がついています。
■ポメラニアンの性格
いつもコロコロとよく動く毛糸玉のようなポメラニアンは、一時でもじっとしていない活発な犬種です。好奇心が強く、遊び好きで、自信に満ちており、いつも何かゲームや冒険をしようと身構えているようなところがあります。また、注意深い性格なのでなにか物音がすれば、吠えて不審者を教えてくれる勇敢な面も持っています。見知らぬ人には少し神経質になり、他の犬にはやや攻撃的になる場合もあります。なかには吠え癖を持つ犬もいるようです。吠え易い体質があるので室内の番犬向きともいえます。
ポメラニアンは元々が寒い地方の大きな犬を改良して作られたこともあり、小型らしからぬ度胸の持ち主です。加えて適度に頭もよく、神経質ではないので、風貌の可愛らしさに騙されて甘やかさなければとてもしつけやすい犬種です。
■ポメラニアンの毛色
ポメラニアンの毛色は、ブラック、ブラウン、チョコレート、レッド、オレンジ、クリーム、オレンジ・セーブル、ウルフ・セーブル、ビーバー、ブルー、ホワイト、パーティ・カラー、ブラック・タンなどです。
■ポメラニアンの飼育
ポメラニアンのもつれやすい被毛は十分な手入れが必要です。毛量の多さから肥満ややせすぎに気付きにくいので定期的にチェックしましょう。ダブルコートで足先まで毛に覆われているため小型の中では寒さに耐えるほうですが、夏の暑さには要注意です。また、骨が細く骨折しやすいので、飛び下りなどはさせないようにしましょう(ただし、骨を鍛えるためにある程度の縦運動は必要)。
ポメラニアンは暖かい被毛を持っていますが、屋外での飼育は向かないため、室内で飼育するようにしましょう。活発ながらも小柄なポメラニアンには、毎日運動させることが必要ですが、短めの散歩をしたり室内でゲームを取り入れたりすれば十分です。暖かい被毛を持っていますが、見た通り小さく、家族との交流を必要とするので、室内で飼う方がよいでしょう。
二層になった被毛をきれいに保つためには、1週間に2回程度のブラッシングが必要です。
■健康上の注意点
活発な犬なので、毎日の運動は欠かせません。ただ、膝の脱臼や骨が細いため骨折をしやすいので、あまり過激な遊びはしないほうがいいでしょう。食事は若犬から成犬では、栄養バランスのよい小型犬用ドッグフードを与えるようにしてください。嗜好性を考える場合は、ドライフードと缶詰フードの混合食が、簡単でお勧めです。過食・偏食は肥満や病気の元になるので注意してください。また眼病に罹りやすい面があるので注意が必要です。
■気をつけたい病気
・膝蓋骨脱臼 ・流涙症 ・気管虚脱 ・動脈管開存症
※これらはすべてのポメラニアンに起こる訳ではなく、
またポメラニアン特有の疾患でもありません。
■寿命 12ー16歳